娘ほどの年齢の女性客が赤裸々に語った身の上話にグッと来る

先日、終電もなくなった深夜に20代後半と思われる一人の女性客を乗せる機会がありました。
行き先を告げられ、自宅と思われる目的先まで運転をしていると、後部先に座っていた女性が唐突に声を掛けてきました。

「以前も乗せてもらいましたよね?」

急に声を掛けられたこともあり、私は思わずエッと言ってバックミラーを覗き込み改めて女性の顔を確認したのですが、思い出すことができません。
一瞬返す言葉に迷っていると、女性の方から憶えてる訳ありませんよね、と微笑んできました。
私は少し申し訳ない気持ちになりながら、失礼を承知でいつ利用したかを尋ねると、3ヶ月ほど前だと答えてきました。

正直会話をたくさんしたお客様や、良くも悪くも特徴的なお客様は1度の乗車でもかなり記憶に残るのですが、そうでないと3ヶ月前の記憶を辿るのは難しいです。
しかし逆に彼女はよく私のことを覚えているなあと心の中で感心していると、それを読み取られたかのようにぽつぽつと語りだしたのです。

「この車に乗った時、芳香剤の香りで前乗ったタクシーだってすぐに分かったんです。別れた彼の車と同じ香りだったから」

黙って話を聞いていると、3ヶ月前に乗車した時はまだ付き合っていて、結婚も考えていた恋人とつい最近別れ、私の車の香りがその恋人が使用していた車用のエアーフレッシュナーと同じだったから気付いたというのです。
何気なく使っている芳香剤が思わぬ記憶を残す物だな、と内心驚きながら彼女が続ける話に耳を傾けていました。

「3ヶ月前に乗った時は、彼とのディナーの帰りでした。私の誕生日の1週間前で、来週まで待てないからって花束もくれて」

そこまで聞いて、確かに3ヶ月ほど前に立派な花束を抱えた女性を夜中に乗せたなと微かに記憶がよみがえりました。

「誕生日には1泊の温泉旅行に行きました。毎年、お互いの誕生日には少しリッチなホテルや旅館に行くのが恒例になっていて。でも、それが最後になっちゃいましたけどね」

別れた原因は、彼の浮気だったと。
それまで全くそんなそぶりも見せずに4年以上付き合っていた彼には1年程前から浮気をしていた女性がいたことが発覚し、話し合いの結果先週別れたと言いました。

彼女の話し方はとてもさばさばとしており、私はつい離れて暮らす自分の娘のことを思い出してしまいました。
今年で30になる娘は、親の心配を知ってか知らずかあまり結婚願望がない様で、私が知っている限りでは2年以上恋人もいません。

目的地に着き、彼女は車から降りるとこう言いました。

「今日話したこと、親にも言ってないんですよ。親も結婚を期待してたから言いづらくって」

私は思わず微笑んで言いました。

「大丈夫、きっとまたいい人が見つかりますよ」

それは彼女と同時に、娘に向けられた言葉でもありました。

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