「お化け乗せたことあります?」に実体験で応えてみたい私の体験談

タクシーの運転手をしていると、たまーにお客様から尋ねられる、ある質問があります。
それが「お化けを乗せたことってあります?」というもの。
いい年をして、と恥ずかしくもあるのですが、実は私、そういう話が嫌いではありません。
いや、むしろ大好きと言ってもさしつかえないでしょう。
タクシーと幽霊、確かによく聞く話ではあります。
たとえば、夜道で顔色の悪い女性を乗せたが、目的地を言ったきり一言も口をきかない。
指定された場所に着いて「お客さん、着きましたよ」と声をかけたら誰もおらず、シートがぐっしょりと濡れていた…なんてやつですね。
ところが残念なことに、私や私の周りには「幽霊を乗せたことがある」というドライバーがいないのです。
まぁ、「怖い話」がまったくないわけではありません。
ですが、おかしなお客に当たってしまったとか、危うく事故になりかけたとか、そういう方面の怖い話が多いのです。
この場合、お客様が求めているのはいわゆるタクシー怪談、幽霊の怖い話でしょう。
しかしこと心霊関係については、乗せるはおろか、見たことすらもないのです。
本やネットで適当な話を拾ってきたらいいのでは、と思ったこともありましたが、そのような行為はどうも、怪談好きとして気が進まないのです。
どうせなら完全オリジナルの、しかも自分で体験したタクシー怪談を、いつかお客様に語ってみたい…そして怖がらせてみたい。
そんなどうしようもない憧れがありました。
そんなある日のことです。
いくらクーラーをかけても、何となくじっとりと汗ばむような陽気の頃でした。
深夜近く、私は大きな運動公園の横の道路で、タクシーを走らせていました。
お客様はおらず、車内には私一人です。
人や車の通りは少なく、光源は公園の脇にある遊歩道の街灯と車のライトのみ、という感じで、いつもながら寂しい場所だなと思いながら運転をしていました。
その時です。
ふと気づくと反対車線側の歩道に、白っぽい服を着た女性らしき上半身が見えました。
その女性は、歩いているとは到底思えない速度で、こちらの方向へ歩道をすーっと移動してきます。
おまけに頭が動いていません。
普通人間が歩くときは、頭が上下するものです。
これは、と思いました。
ついに幽霊を見てしまった、乗せるまでには至らないが、私にも持ちネタができた…!
思わず胸が躍りました。
ところが横断歩道にさしかかり、道路沿いの植え込みが途切れた瞬間、その女性は人間にあるまじき平行移動をしていたのではなく、単に自転車に乗っていたのだということがわかりました。
やはり自分でも怖かったのか、ほっとした気持ちもありましたが…残念な思いはぬぐえませんでした。
私のように「見たいなぁ」と思っていると、そういう経験をかえってしにくいものなのでしょうか?
未だにお客様に提供できる、本物のタクシー怪談は手に入らないままです。

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